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島田荘司
(しまだそうじ)
昭和23年広島生まれ。 武蔵野美術大学卒。昭和56年「占星術殺人事件」で衝撃なデビューを果たす。
その後も、続々と意欲作、傑作を発表。死刑問題、日本人論についての深い考察も、ミステリーという枠組みを越え、幅広い読者の共感を呼んでいる。現在、ロスアンジェルス在住。
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これまでに書いたエッセイで、エッセイ集には入れなかったもの、これからも 入れる予定のないものを、ここに置いておきます。近い将来原書房でエッセイ集を作るので、この中のひとつ
かふたつは、加筆して収録するかもしれません。また今後書くエッセイも、本でなくこのコーナーに置く可能性もあります。非常に長いものは、やはり書物の方がいいのでしょうね。
「韓国人形の謎」は、珍しいショートショートの創作です。これなどは、今となっては珍品といえるでしょう。
インタヴューはさらに貴重です。これらは、もうまず将来活字になることはありません。掲載紙は私自身も紛失しているから、ここでしか読むことのできない情報です。これらは、鎌田昌一さんという人が、いっとき「島田荘司研究」という小冊子を発行してくれていたから残ったもので、これがなければ間違いなく散逸していたでしょう。
エッセイ集に入れなかったものと言いましたが、右タイトルを見ていると、大切なものはいろいろとあります。以下で、少しこぼれ話を披露しましょうか。
「遅れてきた出雲一号」は、とても大事な情報です。単線地区で、時刻表の時刻に綿 密に依存したトリックをやろうと思うなら、それは雪のない季節でなくてはならないというのはその通りで、これは創作上の大切な注意点です。
「しし座のヒッチコック」と「本格ミステリー宣言」は、ちょっと面白いエピソードがあって、双方ともに掲載雑誌の編集者が付けてくれたタイトルです。この頃はエッセー書きにも馴れていず、依頼されたエッセーに、タイトルを付けずに手渡したりしていました。そうすると、こちらも駆け出しなので、向こうが適当にタイトルをつけてくれるのです。今ならタイトルは付けて渡すし、付け忘れていれば、タイトルはどうしましょうと必ず相談されます。
「しし座のヒッチコック」は、お持ちでないヒッチコック作品、すべてヴィデオにコピーしますよと言われ、これにつられて書きました。このタイトルは、雑談中にぼくが話した内容から思いついたのでしょう。
「本格ミステリー宣言」は、このタイトルが付いた掲載紙「青春と読書」を見て天啓を受け、これがのちに同名の評論集を書くモティヴェイションになりました。この本はかなり重要なものとなり(物議をかもしたという意味でも)、1、2、そして今月の「21世紀本格宣言」にも発展するので、このタイトルを考案してくれた編集者の手柄はずいぶんと大きいですね。
「しし座のヒッチミコック」も同様で、このタイトルならばもっと書きたいことがある、と掲載紙を見て感じ、のちにそういうものを書きました。これらは編集者の付けてくれたタイトルが優れていて、のちにもっと大きなものをぼくに生ませてくれた、いわば沸騰石です。
「江戸への短い旅」にも、ちょっとした思い出があります。これはぼくの家に転がり込んだ、父親が日本人のダリルという黒人のことを書いていますが、彼はスペイン語も堪能で、これはたぶん今はじめてあかすことでしょうが、「水晶のピラミッド」に出てくるスペイン語は、彼が書いてくれました。あの作品執筆中に、たまたま彼が居合わせたのです。
「水晶のピラミッド」は、駅前弘栄堂のベストセラーのガラスケースに入ったので、それを見て彼が喜んだり、日本の本は安いと感心したりしていたのを思い出します。
もちろん彼にも一冊あげました。
この頃、どういうわけかぼくの家に突然外国人が集まるようになり、否応なく英語を喋らされて、これがぼくのアメリカ行きの準備になりました。
ぼくがアメリカに去ると、彼らもまた世界中に散っていき、ダリルは行方知れずになりました。今はどこでどうしているのか、時にふと思います。まあ左のエッセイ群は、そんなあれこれを、ぼくに懐かしく思い出させますね。
2003年6月22日記 島田荘司