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嵐山の駅を出ると、まだ陽は高い時刻のはずなのに、雲行きのせいで空は黄味がかった灰色に薄暗く、まるで夕闇が迫るようで、時おり強い風に梢が鳴った。小走りで渡月橋を渡る時、稲光が走ったように思って空を仰いだが、もう光らなかった。春雷か。
琴聴茶屋に入っていくと、客は少なく、赤い布のかかった窓ぎわのテーブルに御手洗が座っているのが見えた。――テーブルに近づき、御手洗の隣に腰を降ろすと、御手洗の顔の向こうに川と渡月橋が見えた。(中略)
「石岡くん、そしてこちらはね、―――例の梅沢家占星術殺人事件の、われわれの尊敬する犯人でいらっしゃる」
「占星術殺人事件」から引用
琴聴茶屋
誰もが、その名前は知っている京都の有名な観光地嵐山。
嵐山の中心を流れる桂川・保津川にかかる渡月橋を渡ろうとするちょうど入り口のところに琴聴茶屋はある。
写真を撮るのが目的だったので、嵐山が賑わう前にと思い早めに訪れた。いつも大勢の人で賑わう通りも、これからの時間に備えるようにどこかピンとした雰囲気が漂っている。他の街と空気が違って感じるのも魔都・京都の所為だろうか。いや、ただ単に朝早いためだろ……
写真を見て貰えれば解るのだが、大きな提灯に『桜もち』と書かれているのが1番先に目に入ってくる。言うまでもないが、この店は占星術殺人事件での最後の謎解きをした場所だ。名物はあんの入っていない桜餅は有名だ。あんの入っているものといないものに薄茶で600円。残念ながら僕は過去何度も、ここ嵐山を訪れているのだが、1度も口にしたことはない……
占星術殺人事件を始めて読んだ日から十数年、未だこの願いは叶えられずにいるのである。
2002 Photo and report ten
Location Kyoto
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