ずいぶん急な坂道だった。道の左右に民家など一軒もないような坂道を、私はなんとなく空想していたのだが、そうではなく、民家もアパートも、結構坂の両側に建ち並んでいるのだった。ただ新しい家は一軒もない。どの家も古びている。戦前から建っているのか、それとも戦後すぐにでも建ったようにみえる家が、ぎっしりと軒を並べている。(中略)
坂の中途左側に、ぽつんと小さな石の碑が立っていて、「くらやみざか」と彫ってある。これは平仮名で書かれている。
「ああ、これですね?」
と御手洗が声をあげた。石碑を少し過ぎた右手に、まるで城跡のように、黒々とした石垣が立ちふさがった。大谷石らしい石をレンガ状に細かく切断し、これを積みあげて造った高い石垣だった。


「暗闇坂の人喰いの木」から引用

くらやみ坂
桜木町の駅から20分ほど歩いたところにあるだろうか。引用はこの坂を下から上ってきているが、僕は坂上からここに至った。本を参考にして行けば行き着けると思うが、写真でも見る通り何の変哲もない坂道だ。唯一、ここが暗闇坂と分かるのが、この石柱の『くらやみざか』になる。そしてこの作品の主軸的存在の『大楠』は存在しない。
辺りはのどかな住宅街でとてもその昔は刑場だったとは思えないほどだ。
横浜に行く機会は奇想をやるようになってから何度も訪れる機会もあったが、このくらやみ坂は桜木町からも少し離れておりなかなか訪れるというのはない。今回は舞台案内のために写真を撮りにきた。思えばここもその昔訪れたことがある場所だ。左に見えるマンションから桜木町の方を望めばランドマーク・タワーも見れることが出来る。
そう、ここも横浜なのだ。
それにしても、この辺りに付いている名称などは何だか意味深いように思える。「さくら、ゆきみ、くらやみ、もみじ」どことなく風情を感じる。


2001 Photo and report ten
Location Yokohama