《1、まず問題が発生する》
起きて、と誰かの声がする。
「うーん。石岡君、もう少し……」
僕は言った。
「私、石岡さんではありません。早く起きて頂けませんか?」
その通り、これは石岡君の声ではない。
「じゃあ、一体誰なんだい?」
僕は起き上がった。
「おはようございます。御手洗さん」
声はするが、姿は見えず。
「え?どこにいるの?」
僕は辺りを見回した。
「あの、ここです。ここ。下を見て頂けますか?」
言われた場所を見ると、毛玉が落ちていた。
「ゴミはごみ箱へ。昨日、石岡君に注意されたばかりじゃないか」
僕は毛玉をつかんだ。
「ちっ、違います!私、ゴミじゃあないです。捨てないで下さい」
「あ、毛玉が喋った。は?なんじゃこりゃ?」
「貴方、反応鈍いですね。まあいいや。あのですね。飛び上がって、前転をして、ベッドの上に仰向けで着地してもらえますか?」
「朝からそんな注文をしてきたのは、君が初めてだよ」
「ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして。よっと」
僕は両手で毛玉を持つと、指示通りにベッドの上で仰向けになった。
「うわっ」
目の前が真っ白になった。意識が遠のく。身体中が痛い。
「手紙をここに置いておきますから、石岡さんにも伝えておいて下さい。それでは、私はこれで失礼します」
あいつは一体何なんだ。新種の生物兵器か……。
《2、次に異変が現れる》
「うーん」
耳元で女の声がした。
「誰?」
お前の方こそ誰なんだ。
「あ、僕だ!あれ?声が変だ。風邪かなあ」
僕は起き上がった。
「うおっ、ガンなのかこれは?」
胸が腫れている。よく見ると、身体の線が曲線である。
「ああそうか。僕って、実は女だったのか。納得」
そんな訳ないだろう。
「そうだそうだ。ん?手紙発見。見るべし見るべし」
がさごそと取り出し、黙々と読む。
「?」
黙読で理解できない時は、音読をしよう。
「本日限り、女性になって頂きます。文句を言い過ぎると、ナイスバディーでフェロモンムンムンのお姉様になってしまうのでご注意下さい。追伸、御手洗さんのサイズに合うスカートがありませんでした。ズボンしかなくて、本当にごめんなさい。それと、石岡さんって、色が白くてとても似合うから、頑張っちゃいました」
ナイスバディー、フェロモン。やめてくれ!それは嫌だ!
それにしても、何を頑張ったんだろう?
「うあー!!」
女の高い声がした。
「誰だろう?」
成り行きから考えると、石岡君である。
「御手洗く……」
僕の部屋のドアを開けた石岡君、言葉に詰まる。
彼を見た僕も、右に同じ。
何故なら、彼の髪の毛は目測で三十センチ近くあったから、だけではない。衣装が凄すぎるのだ。迷子になった場合には、特徴の説明が簡単そうな服を着ていた。短く言うと、フリルがふんだんに使われているワンピースである。
なんだか、頭も服も重そうだな。
「石岡君、これを読んでくれないか」
僕は手紙を渡す。
彼は二分と三十秒ほど完全停止して、呼吸を整えてから話し始めた。
「……着替えてくる」
石岡君は自室へ戻ったが、一分も経たずに出て来た。
「どうしたんだい?」
僕も部屋を出て来たところである。
「全部スカートだった」
彼は力なく言った。
ああ、全部フリフリだったのか……。
「朝食、作ろうか」
僕の提案に石岡君は頷いた。
《3、これが異変に対する反応》
「ああっ!もう、邪魔だなあ。この髪の毛」
石岡君は野菜を洗いながら怒り出した。
「落ち着くんだ、石岡君」
僕は目玉焼きを作りながら、彼をなだめた。
「御手洗君」
「何だい?」
しまった、黄身が割れた。この際、スクランブルエッグにしてしまおう。
「君って、あまり変化がないよね」
「うん。そうみたいだ」
これは比較対象が石岡君の場合だ。
「声だって、ハスキーだし」
「石岡君の声は、随分と高くなったね」
「御手洗君は髪だってそのままだし、服もまともだっ!」
そこまで話すと、彼は凄い勢いでキャベツを千切りにし始めた。
「服、貸そうか?」
気の毒になって僕は言った。
「僕じゃあ、サイズが合わないよっ!」
切るスピードが加速した。
「石岡君、君の名前は女になっても、何の問題もないよ。よかったね」
「全然嬉しくないよっ!」
キャベツの千切りを終えた彼は続けて、もの凄い勢いでキュウリの半月切りを始めた。
僕は火に油を注いでしまったらしい。
反省。自主規制します。
マーブル焼き(目玉焼きでもスクランブルエッグでもない)を皿に盛り付けると、パンと一緒にセットして、大人しく待つことにした。
食事中の会話は順調に進んでいたが、そう長くは続かなかった。
「僕だけ、何か遊ばれているよね」
「……」
石岡君の一言によって、まるで氷河期のような厳しい寒さが到来したのだった。
《4、波乱の予感》
電話もなければ、訪ねて来る人もいない。
穏やかに時は過ぎていった。
しかし、そういうものは長く続かないのが世の常である。
玄関のドアから、平和を破壊する音が響いた。
石岡君は機敏に反応すると、衝立ての向こうに隠れてしまった。
どうせ宅配便か何かだろうと思いながら自室へ戻り、体型を隠せそうな服に急いで着替えてからドアを開けた。
淡い期待は、濃い落胆になる。
そこには、初老の小柄な女性が立っていた。
「あの、こちらでは、色々な相談に乗って頂けると聞いたのですが」
「はい、そうですよ」
「ご相談したい事がありまして参りました。突然で申し訳ありませんが、お時間よろしいでしょうか?」
「ええ、構いませんよ。中へどうぞ」
よろしくはないが、だからと言って追い返すわけにもいかない。
ソファを勧めて自分も座ると、テーブルには既に紅茶が用意されていた。
今日の石岡君は当者比で通常の二倍のスピードで行動している。
彼がこんなに早く動く事が出来るなんて、僕は知らなかった。
やれば出来るじゃないか!石岡君。僕は今、猛烈に感動している!この気持ちを彼に!と思ったが、その彼は現在、自室に引き篭もり中である。
話を戻そう。
「それでは、お名前とご住所、ご用件をどうぞ」
「はい。私、東京の八王子より参りました、藤木梨花と申します。今日は、盗まれた指輪を探して頂けないかと思って、ご相談に来ました」
「指輪ですか?それなら警察の方が得意ですよ」
「もちろん警察にも頼みました。それでも、心配で黙って待っていられないんです。あれがないと私……」
「それほど大事な物なのですか?」
「ええ、母から受け継いだ物なんです」
「失礼ですが、ご出身は中国の方ですか?」
「そうです。あの、何かアクセントがおかしかったですか?」
「いいえ。とてもお上手ですね、リーフォアさん」
「まあ!ありがとうございます。日本に来てから、もう何十年も経ちましたからね」
「それで、指輪はいつ頃なくなりましたか?」
「十日前です。家事をする時は、なくすと困るのでいつも外して箱にしまってテーブルに置いておきます。その日、トイレの掃除を終えてテーブルを見るとなくなっていたんです」
僕はビクンと反応してしまった。
いかんいかん。深呼吸、スーハー。平常心。
「その時は、どこに置かれていましたか?」
「庭に面した部屋のテーブルです。特に怪しい人影は見ませんでした。それと、何かが擦れるような音が聞こえた気もするのですが、最近、耳が遠くなってきましたから、ちょっと自信がありませんね」
その時、僕の頭に何かが浮かんだ。
これを逃してはいけない!
僕は急いで立ち上がって、今のイメージを追い掛けた。
待て待て。一体どこへ行ったんだ?
あ、これか。絶対そうだ。うーん。それにしても、この形は何だろう。団子を真ん中に一つだけ残したような、この形は。
どこかで、気にしないで下さい。いつもの事ですから、という声が聞こえた。
分かった。気にしないぞ。次、藤木。どこかで見たな。これは……。
また声がする。
藤木龍彦さんはご存知ですか?
ああ。そう、それだ。
ツチノコを発見したとかで新聞に載っていましたよね?
新聞!そうだ!間違いないぞ!
なんだ、そうだったのか。道理で聞き覚えがあるはずだよ。石岡君って、凄いじゃないか。
え?今、何て言った?
彼さ、女になってから頭の回転が速くなったよね。
僕がソファの方を振り向くと、石岡君が言った。
「藤木さん、今からお宅にお邪魔させて下さい」
《5、予感は現実となった》
「こりゃーまあ、綺麗な娘さんだあ」
これは、駅まで迎えに来た龍彦さんの石岡君に対する最初の言葉。
「ありがとうございます」
石岡君は軽く首を傾げて、笑顔で言った。
石岡君!一体どうしたんだ?熱でもあるのかい?という言葉を飲み込んだ。
「こっちのは彼氏かい?」
龍彦さんは僕を見て言った。
僕は今、全身黒ずくめである。
「初めまして」
返事に困ったので、無難な言葉を選んだ。
「あなた」
梨花さんがたしなめる。
「ははっ、悪い悪い。さあ、乗ってくんな」
車中で石岡君の異常は確認された。
「龍彦さんは薬酒をご自分で作られるそうですね」
「そうですよ。会社を定年退職してからというもの退屈でね。庭で薬草を育てて、それを酒にしています」
運転席で龍彦さんが説明した。
「あの私、最近、眼は疲れるし、肩は凝るし、お腹も腰も痛いんですよ。それに、冷え性も悪化していて」
なな、なんと!石岡君が自分の事を私と言い始めたではないか。
僕はそんな彼を見ていると、急に切なくなってきた。
「石岡君、無理を……」
し過ぎると余計におかしくなるからやめた方がいい、と言うはずが。
「そうだわ、気分が悪い時は無理に我慢しないで言ってね。石岡さん」
助手席の梨花さんが心配そうに言う。
「はい」
石岡君が、お淑やかに返事をする。
「そういった症状によく効くのがあるから、遠慮せずに飲んでいきなさい」
龍彦さんも言った。
「どうもありがとうございます。助かります」
石岡君はしおらしく言った。
ああ。彼は、もう駄目なのかもしれない。
どうか、石岡君の精神が壊れないうちに、今日という日が終わりますように。
もしも、壊れたとしても修復可能な程度にして下さい。
アーメン!
《6、逃避を憧れる》
龍彦さんは三人を降ろすと、家の裏へ車を置きに行った。
梨花さんは僕達を客間へ通すと、お茶の用意をしに台所へ行った。
そして二人だけになった。
注意、これは小説の題名ではない。
いやいや、そんな事を言っている場合ではない。
「石岡君。大丈夫かい?」
大丈夫ではない、という僕の認識を覆して欲しかった。
「もういいのよ」
彼は諦観したかの様に答えた。
口調まで変わってしまっている。うあぁ、石岡君!
「それよりも、貴方は梨花さんの方を頼むわね。私は龍彦さんと話をする」
最後の方はやっと聞こえるくらいの小さな声だった。
どうしたのかと思ったら、足音が聞こえてきた。
「お待たせしました。おや、梨花はまだですか?」
龍彦さん登場。
「ええ、お茶の用意をして下さっています。龍彦さん。お邪魔して早々に申し訳ありませんが、お願いできますか?ちょっと気分が悪くて……」
「おお、それはいけない。では、こちらへどうぞ」
龍彦さんと石岡君は退室した。
しばらくすると梨花さん登場。
「すみません、遅くなりました。石岡さんの様子を見て来たのですが、大丈夫でしょうかね。心配だわ」
あれはもう、大丈夫どころの問題じゃないですよ。という言葉を飲み込む。
「そうですね」
「よく体調を崩される方なんですか?」
「いや、そうでもないんですけれど」
「あら、じゃあ何か悩みでもあるのかしらね」
「とてつもなく大きな悩みを抱えているようです」
女になっちゃいました。なんて言えないし、相談の仕様もないだろう。
「石岡さんとお付き合いは長いんですか?」
「ええ、もう十年近くになりますね」
「では、ご結婚の方はもう?」
「いいえ。それはまだです」
僕も彼もまだ独身だ。
ん?何だか雲行きが怪しくなってきたぞ。
「まあ。あんなに素敵な方なのに、どうしてです?何か問題でも?」
台風直撃である。
頼むからレオナの様な質問だけはやめてくれ!
「結婚する場合には、ちょっと書類上に問題がありますからね。それよりも、指輪がなくなったのはこの部屋ですか?」
「え?ああ、はい。そうです。ここに置いておいたんです」
彼女はテーブルの真ん中、お菓子が入っているお皿を指差す。
「なるほど」
「あの、指輪は戻ってくるのでしょうか?」
「はい。これから戻ってきます。もう少し待っていて下さいね」
しばらく話をしていると、廊下で龍彦さんの声がした。
「ちょっと、君!」
引き戸が勢いよく開くと、大きなビンを抱えた石岡君が仁王立ちしていた。
「梨花さん、包丁とまな板を持って来て下さい!」
石岡君はテーブルにビンを置きながら言った。
「はっ、はい」
「君は一体何をするつもりなんだ?それを返しなさい」
「龍彦さん。これはマムシです!ツチノコなんかじゃないわ。めずらしくもない、ただのマムシ酒なのよっ!」
「ああ。そうか、君は飲みすぎているんだ。いくら美味しいからって、あんなに何杯も飲めば誰だって酔っ払うに決まっているだろう」
「御手洗君!貴方も見て!」
髪を振り乱しながら、真っ赤な顔をした石岡君が迫って来た。
「分かった。見る。見るから少し落ち着きなさい」
僕は彼を座らせてから、ビンの中身を見た。
「うーん。確かに、これはマムシだね。間違いない」
「えっ、そんな……」
がっかりする龍彦さん。
「あ、あの、持って来ました」
梨花さんが怯えながら言った。
「ありがとうございます」
石岡君は受け取る。
「だから、これはもう要りませんよね」
石岡君はそう言いながらビンの蓋を開けて中に手を入れると、マムシを鷲掴みにしてまな板の上に置いた。
「きゃっ!」
「ちょ、ちょっと、君は何を……」
「うるさいわねえ!お酒の方にはもう十分味が出てるんだからいいでしょう!」
石岡君は藤木夫婦に包丁を向けながら訳の分からない事を言った。
このままだと彼は犯罪者になってしまう。早く止めなければ!
「石岡君。刃物を人に向けてはいけないよ」
僕の言葉に笑顔で答えると、彼は蛇の解体を始めた。
色白で可愛らしい顔立ちをした娘が長い髪が乱れるのも気にせず、一心不乱に蛇を切り刻む姿は言葉で表現できないほど恐ろしかった。
「うっ……」
ついに梨花さんが失神した。
「梨花っ!」
龍彦さんが急いで支えた。
僕も手伝って、梨花さんを運び出した。
部屋の方から、なかなか切れないわ。しぶといわね、という声が聞こえた。
正直、僕も倒れたかった。
客間に戻る途中の台所に石岡君がいた。
彼は水道を使って洗っている。なんとか見付けたらしい。
「あ、龍彦さん。これを」
石岡君が生臭い小さな箱を差し出す。
「これは……」
龍彦さん。当然ながら、受け取るのを躊躇する。
「このままでは気の毒過ぎますから、新しい箱をプレゼントして下さいね」
外から車のクラクションが聞こえた。
「あら、タクシーが来ちゃいましたね。はい、どうぞ。それでは、ごめんあそばせ」
石岡君は龍彦さんの手に箱を押し込むと、スタスタと玄関に向かう。
「お騒がせしまして、本当にすみませんでした。失礼します」
僕は頭を下げると、石岡君を追い掛けた。
《7、もう何が何だか分からない》
僕がタクシーに乗ると石岡君が訊ねた。
「御手洗君。私のこと好き?」
はあ?と言おうと思ったが、彼は真剣な顔である。
「私、こんなになっちゃったけど、それでも貴方は好き?」
石岡君は今にも泣き出しそうだ。
こんな、と言ってもそれは今日一日だけである。彼は彼だ。石岡君に変わりはないのである。結論。僕は石岡君が好きである。
念のために、彼は恋愛の対象には入らない事をここで主張しておく。
「君がどうであれ、僕の君に対する気持ちは変わらないよ」
石岡君は嬉しそうな表情を浮かべて運転手に言った。
「よろしくお願いします」
「了解。シートベルトを着けて下さい」
僕達は指示に従った。
「準備はよろしいですね?」
「はい!」
石岡君は元気よく返事をした。
「では……」
どこからか、発車オーライ、という声がした。
タクシーはもの凄い勢いで走り出した。
「え?ちょっと待ってくれ。君!一体何のつもりだ?危ないじゃないか!」
僕は混乱し始めた。
「きゃっははは!」
石岡君は大喜びである。
「もっと!もっと速くして!」
石岡君、もう十分速いよ。という言葉が言えなかった。
ああ。ついに彼は僕の手の届かない所へ行ってしまったのだ。
「石岡君……」
僕は横を向いた。
そこには、目を閉じた石岡君の顔があった。
「うあっ!」
徐々に近づいてくる。
彼の服装からすると、このままでは映画のワンシーンになってしまう。
早く逃げろ!なんとしてでも逃げるんだ!そうしないと、また石岡君との関係を問い質す手紙が山ほど来てしまう。
そんなの絶対に嫌だ!
僕は思いっきり頭を後ろに下げた。
《8、訊きたいけれど恐いんだ》
頭に激痛が走った。
目を開けると、そこには見慣れた顔があった。
「うあっ、やめてくれ!石岡君!」
僕は顔をガードした。
「どうしたんだい?御手洗君」
指の間から覗く。
「あれ?君、髪の毛はどうしたの?」
「あるよ。見れば分かるだろう」
「レースがふんだんに使われたワンピースをどうして着ていないの?」
僕はソファとテーブルの隙間から上体を起こして訊ねた。
「君はそれを僕に着せたいわけ?」
「君!僕!」
僕は立ち上がった。
「が、何なのさ?」
「石岡君!君はまともなんだね!」
「当り前だろう。誰だって君と比べればっ……」
僕は嬉しさのあまり、彼に抱きついた。
「はいはい、もう分かったから。早く離れてくれないか」
「ああ、ごめんよ。石岡君」
僕は涙ぐみながら、彼を離した。
「一体何なのさ?まっくろくろすけが見たいって言うから、となりのトトロを借りてきたのに、君はオープニングから寝ていたよね」
「あっ!そうか。だから女になったのか」
という事は、あれは毛玉じゃなかったのだ。
そういえば、話の中に、発車オーライ、のセリフもあったな。
「何だ、そうだったのか」
「はあ。もういいよ」
彼は衝立ての向こうへ行った。
「石岡君。どうしたんだい?」
「紅茶、飲むだろう?」
「ああ、いいね」
僕はキッチンにいる石岡君の姿を見た。
いつものスピードである。
あれは夢だったんだ。ああ、よかっ……。
僕の視線の先にはビンに入った薬酒があった。
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