夢にまで見たピラミッド    628()

テオティワカンの大ピラミッドと二人の若い女性陣

 このツアーに来る約1ヶ月くらい前に「今度ここ友達と来るんだ。まずいなー、今見ちゃったら感動が薄れちゃうよ」と夢の中で言っていた、テオティワカン(Teotihuacan)の遺跡はMexico Cityの郊外、車で約1時間の距離にあった。前日は遺跡そのものにはお目にかかれなかったけど、この日からはこの旅行のハイライトの遺跡観光が始まる。バスの中からピラミッドの一部が見えたときには本当に感動した。実際に到着してみると、圧巻そのもの。夢の中で見たピラミッドと、どこか似てはいるけれど、確実なリアリティで迫ってくる感じ。夢で見たとはいえ、感動は全く薄れなかった。

 まず最初にケッツァルパパロトルの宮殿をちょっと見た後、死者の道の最北端に位置する月のピラミッドに登りはじめる。「登られない方は下で待っていてください」という宮下さんの声に、「このために来たんだから登らなきゃね」と若い女性陣の一人、梅谷嬢と声を交わす。やっぱり年が近い(彼女達の年齢はいまだに謎だが)だけあって、とても話し易い。前の日には少ししか話すことができなかったが、やっぱり同じ遺跡に興味を持っているということで、話せてとても嬉しかった。他のオジサン・オバサン達は一癖も二癖もありそうだし。もう一人の女性は沢田嬢。彼女達はどちらもハンディカム(最新機種のTR2。いいなー)を手にしていて、後でテープを交換するのだという。ふーむ、いい考えかもね。今回僕もハンディカムを持って行ったんだけど、自分はあまり出演しなかったし。ま、そんなこんなで月のピラミッドに登り始めると。なんだこれ。結構キツイ。階段の幅が少し狭いので、ちょっと横を向いて登らなきゃいけない。しかも急。少しバランスを崩したらまっさかさまかもしれない。中腹まで登った時が一番恐かったかな。やっとこさ頂上まで辿り着くと、死者の道を中心とした遺跡が眼下に広がっていた。うーん、爽快この上なし! ただ、Mexico City自体が海抜2200m以上の高地にあるので、階段を登った後は息が切れてしょうがなかった。心肺機能はちょっと弱めの僕だからなおさらかも。でも爽やかな風に吹かれながら広大な遺跡を眺める気分は本当に最高だった。沢田嬢にはかなりキツかったらしく、ゼーハーしてたなー。しっかし登らなかった人達って、なんのための遺跡観光かわからないよな。もったいないよねー。

 

太陽のピラミッドとボラドーレス

 月のピラミッドを降りた後は、HOBと梅谷嬢と沢田嬢と僕の4人で、ハンディカムを撮り合いながら死者の道を南下して太陽のピラミッドへ。宮下さんによると、死者の道は南に行くほど少しずつ下がるように人為的に作られていて、太陽のピラミッドの頂上と月のピラミッドの頂上が同じ高度にあるように設計されていたのだという。そういう説明を聞く度に感動してしまう。「太陽のピラミッド」とか「死者の道」というのは、発掘後つけられた名前だから、当時は人々はどんな呼び方をしていたんだろう。またどんなことにピラミッドを使っていたんだろう。そんなことを考えながら約5分の距離を歩いて、太陽のピラミッドに到着。やっぱり高いぜ。世界で3番目に大きいピラミッドなんだって。月のピラミッドと違って、所々に踊り場のようなものがあるんだけど、頂上まで登るにはかなり疲れそうだなー。でも登ることには変わらないんだから、さっさと行っちゃえ!って感じで、かなり早いペースで頂上に登った。月のピラミッドに優るとも劣らない大景観。吹き出た汗を強い風が乾かしてくれる。Mexico Cityから近いだけあって、各国から観光客が来ていたみたい。気持ちいいの一言に尽きるって感じだった。僕はカメラは持って行かなかったので、HOBに写真を撮ってもらったりして、しばらくしてから下山(?)した。土産物の売り子が結構うるさかったけど、ピラミッドとか遺跡の雰囲気は荘厳そのものだった。

 太陽のピラミッドの後はケッツァルコアトルのピラミッド。このピラミッドは現在も修復中らしく、登ることができるのは一部分だけだったが、上から見てみるとケッツァルコアトルと雨の神チャックの石像がかなりリアルに修復されている。昔の人がどんなに雨を大切に思っていたかがなんとなく伝わってくる。今回の遺跡の旅は、まるで雨の神を追いかけているかのような旅だったのだから。

 さて遺跡観光も終わり、バスに乗り込み昼食に向かおうとすると、インディオ達のショーを一人$1で見れるという。オバサン達はバスから見るからいいとか言って払おうとしないので、困った柿沢さん(添乗員のお姉さん)は自腹で払ってくれたみたい。ったくワガママなんだから、オバサン達。そのショーというのはボラドーレスというもので、高い柱の上から4人の男がロープで逆さ吊りになりながら回転して降りてくるというもの。回転するに従って柱に巻き付いていたロープがほどけ、どんどんロープが長くなってついには地面まで到達するという仕組み。実はこのショーにもマヤ暦が隠されているらしい。4人の男達は柱の回りを正確に13回転して降りてくる。13452。これはマヤの260日周期の宗教暦と365日周期の太陽暦との最小公倍数である、52年周期を表しているらしい。とするとこのボラドーレスというものも、一種の宗教行事だったのだろうか。こんなショーを見れるとは思っていなかったので、ちょっと得した気分になった。柿沢さん、ありがとう!

 バスに乗り込んでテオティワカンを離れ、5分ほど走ったところのレストランで昼食をとった。バイキング形式で好きな物を取り、それをトルティージャに巻いて食べるというもの。チリをかけてピリッとさせると美味しかった。食事を終えて外に出てみると、雨が降っている! でも見る見るうちに止んで、太陽が照り付けてきた。うー、雨が降った後カンカン照りになると、湿気がスゴイんだよなー。まあこの後レストランの隣にある土産物屋で時間をつぶしたり(何も買わなかったけど)、竜舌蘭が昔どんな風に使われていたかなどの講義をちょっと受けたりして、バスに戻り、次なる地Meridaに行くべく空港へと向かった。

 

Merida で小冒険!

 Meridaまでは飛行機で約2時間半ほど。ユカタン半島の中心に位置するユカタン州の州都である。ちょうど時期が良かったらしく、街の中に立っている木々にはオレンジ色や黄色の綺麗な花が咲いていた。オレンジ色の花はフランボジャンと呼ばれ、黄色の花はマヤ語で「金色の雨」という意味の花なんだという。宿泊先のHoliday Inn Meridaに到着してテレビをつけると、見覚えのある顔が現れる。えーっ? なんでメキシコで『マクガイバー(MacGyver)』やってるんだ?? マクガイバーといえば、2年前にサンフランシスコに居たときに、USAというケーブルテレビ局でやっていて毎日見てたんだよな。そのUSAがメキシコでも見られるなんて、こりゃちょっとした驚きだった。ちゃんとマクガイバーの後は前と同じく『ジェシカおばさんの事件簿(Murder She Wrote)』だったし。懐かしかったなー。

 そんなこんなでちょっと騒いだ後、HOBと二人でロビーのバーにウェルカムドリンクを飲みに出かけた。今夜の夕食はツアーには組み込まれていないので、自分達で探さなければならない。Tequila Sunriseを飲みながらHOBと決めた店は、「地球の歩き方」で推薦されていた、"Los Almendros"というレストラン。ソカロ広場の近くにあって、ユカタン料理がとても美味しいのだという。早速出かけることにする。

 Holiday Inn Meridaの一番の難点は、ソカロ広場など繁華街まで遠いこと。道は碁盤の目のようになっているのでわかりやすかったけど、車がみんな有鉛ガソリンを使っているらしいので、排気ガスの匂いがスゴイ。ちょうどタイとかでもこんな感じだったけど、しばらく道を歩いていると顔が真っ黒になってしまいそうなくらい臭い。最初は本当にこの道でいいのか?という不安があったが、なんとか目的のレストランまで辿り着くことができた。所要時間約30分。ここでは僕はユカタンのビールのモンテホ(Montejo)と、「地球の歩き方」で推薦されているSopa de Lima(ライムと鳥ガラとトルティージャのスープ)Panuchos Yucatecos(チキンや玉ネギがトルティージャみたいなのに包まれているもの)を注文した。HOBは鳥肉の何かを頼んでたな。最っっ高に美味しかった。僕の頼んだ2つの料理は本当に絶品で、感動の極致に達してしまった。元来美味しい物を食べたり飲んだりするとそれだけで幸せになっちゃう方なんだけど、この時は「知らない土地で知らない言葉を使って知らない物を注文した」という小冒険的な喜びもあって、すごい感激だった。あれだけ食べて2人で¥2,000いかないなんて、スゴイよね。生演奏とコーラスもあったし、もう言うことなし!の夕食だった。

 夕食でいい気分になった後は、10分ほど歩いてソカロ広場へ。9時から民族舞踊が始まるのだという。行ってみるとちょうど始まったところらしく、市庁舎前に置かれている椅子はもう満席状態。民族衣装を着たカップルがたくさん出てきて、足でステップを踏んでいる。驚いてしまうのが、これが観光客のためではなく、市民のためだということ。ここらへんは昼間はとても暑いのでゆっくり休んで、夜涼しくなった頃から遊ぶのだという。立見でいい場所じゃなかったからゆっくりと見ることができなくてちょっと残念だった。ホテルまではタクシーを使った。ソカロ広場のすぐ脇にタクシー乗り場があったので、値段を聞いて乗り込む。値段は10ペソ。相場を知らないのでボラれているのかどうかもわからなかったが、取り敢えずOKして、ホテルへと向かう。後で宮下さんに聞いたら妥当な値段だったらしい。タクシーの運転手さんが面白いおじいちゃんで、片言の英語で話し掛けてくる。自分は66歳だとか、マヤ語が喋れるとか、日本の地名も少しは知ってるとか。とにかく楽しかった。やっぱり旅で現地の人と知り合うのって、旅の醍醐味だよね。「日本には穴の開いたお金があるんだって?」との問いがあったので、最後にHOBから50円玉と5円玉のプレゼント。とても喜んでた。この日は本当に最後までいい気分になれた最高の一日だったと思う。「冒険」という面から見れば、やっぱりツアーじゃなくて自由旅行の方がよかったかなと、今更ながらに思ってしまうけど、ツアーでもこんな小冒険だったらできるもんね。というわけで、大満足のうちにこの一日を終えたのだった。